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はじめての

拍手





かえりみちのこと。
視界上方を過るのは夕焼けを硬質なもので反射したような光、ちかっと煌めいたそれに顔を上げると、ひらっと一枚の紙が手元へと落ちてきた。
四つ折りの白、瞬きを二度する。
だれかの、いのうの、おてがみだろうか。

「……… といき、宛?」

ゆっくり首を傾げてから、とりあえず開けてみようと広げたそれは、やはり手紙だった。
見たことのない字、しかし見覚えのある月影色、から、連想できた相手の顔。

「……」

そして、内容。

「…………、」

一度目は、信じられないような気持ちで瞬きを忘れ。
再度目を通したら、信じられないくらい頬が熱くなった。
三度目は、その熱が、体中の血管に行き渡ったような感覚で。

「……… ッ  ……」

あったかくなった筈の指に籠る力が増したせいか、どうにも、震える。
照れにも感極まったようにもしてやられたかのようにも見える顔を手紙で覆えば、
その隙間から、かんからこんこん、まるいものが転がり落ちる。
望外の喜び、こんなうれしいが、あると、思わなかった。
いっぱい考えて、楽しくなっちゃって、つい、広げてしまった手の中の世界へと贈られたのは。
ふたつの、拍手。
ひとつの、言葉。
ひとつの、絵。
そして、手紙。


「……… あ、りがとぉ……」


届かないくらいの小さな言葉、立ち尽くしていた己の足元に転がる半透明の球体は。
夕焼けに染まって、まるで主人公の彼女みたいなオレンジ色をしていた。
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