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……

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「……」

勉強机に向かう己の視線の先。
目の前に置かれている古びた制帽と、ひとつの石。
無意識に撫でる額、穿ち割られた痕はもうあとかたもない。

「十二死」

つぶやく。
音楽もなく、雨風の音もない晴れた夜、しんとした室内に籠る声。

「寅」

削られた拳も、撃たれた肌も、既に癒えている。
けれど鮮明に蘇る、ひとつひとつ、熱に似た痛み。

「……鯱」

自意識過剰か、実際若干は違ったのか。
学校で向けられた視線の意味合い。
半ば空気であった初めの頃と今とも大分違ったが、それとはまた明確に変わったように思えて。

「……」

拾い上げて握りこむ、己を穿った石。
ぎゅう、力を込めて。

「…… といきは」

身体を丸めて拳に額を当てる。
誰も聞いていない室内で、言葉が途切れ。
牙ですらない、平坦なひとの歯を噛みしめて。


音にせず零した瞬間、制帽に滲み積み重なった矜持から、頭をはたかれたような気がした。
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